原宿のカフェで/番田
通り過ぎるパリの風景
TGVが柔らかな景色を作り出していた車窓
あの日 マルセイユでトランクを引いていた 私は
あの日私を取り巻く何もかもを忘れていた
彼は会社との仲違いについての話をした
風は冬の始まりにひんやりとしていた
不機嫌そうな女の子の隣で海の見える窓を見ていた
そして見たことのある広場を私は少し思い出していた
少し暖かないつもと変わらない景色
私は数年前のことを思い出し コーヒーを少しこぼした
オイルにまみれたサンドイッチを食べたあの日 そして
私は会社での超常現象の話を彼にした
昨日友人に会い
歳の行かない若者が経営しているカフェにいた そして
我を失ったかのような人とすれ違う駅前と 私は ただ
私のまわりに人の多いカフェの中にいた
戻る 編 削 Point(0)