炭化の街/ホロウ・シカエルボク
 
句脂肪が全部下半身みたいに垂れ下がってる男なんだけど
この前港の方でばったり会ったのさ
俺は彼のことを嫌いじゃなかったんで
最近向こうの方には行かないのかい、と軽い調子で聞いてみた
そいつなんて言ったと思う?
「あそこには死神が居るから」
って言ったんだ、冗談じゃないぜ
俺の婆さんが昔、あの場所で同じことを言ったんだ
そしてそれきり二度と近寄ろうとはしなかった


臓器がこむら返る、死後硬直の午後に
角膜の隙間に潜り込んだ不協和音を
爪楊枝でこそぎ出したら視界が赤く染まった
軟膏を塗りこんだらお陀仏だ
世界は白濁して
オープンリールフィルムのようなノイズに包まれている
この街のパズルは失われたピースが多過ぎて
子守歌が年代物のクローゼットで化石になってる
いつかあの空地にこの街の死をすべてジェンガのように積み上げて
真っ黒い炭になるまで燃やしちまおうじゃないか

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