ありふれた旅/
青木怜二
ったらいいですか」と、
牛の首が聞いてきたので、「歩くのが一番いいですよ」と、心からの想いを伝えたら
彼は目から乳を流し、それは飲みかけのエスプレッソに注がれ
私は彼の目を盗んで、こっそりと飲んだ
おいしかった。
そうして一緒に歩いた熊野古道のことについては
きっと、いつか、別のところで
語るとしよう、今はただ
玄関前のドアスコープに貼り付く枯葉蛾の
符牒を解くことに専念したい。
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