身辺雑記2016.11.11/青木怜二
した思考を中断し、程よく冷めたカフェラテの面にまだ残る泡を啜る。
耳を塞ぐ。そうすると血の流れる音がよく聞こえて、それはきっと亡き祖父の
立てるいびきなのだという妄想が五年ほど前からあって思い出すのは
死の前日の断片的な独白。満州、鉄砲玉、「悠久の大義に生きる」……。
白髪を短く刈り上げ、常に社交的な笑みと無難な会話を好んだ彼の意識の基底に刻まれた呪いは
ついに、すべては語られることなく、お茶を濁して葬られようとしたが
私は今も尾を掴み、離さないでいる。血の底にあるそれを、骨に刻むように
じいちゃん、あんたの縋った呪いは俺が生きるよと。
黒いデニパンのポケットの中で9時30分を告げるスマホの振動、学校の自習室は開いたのだろう。
とりあえず、この章まで終わらせたら移動しよう、私はきっと
私のなかの詩人を殺し続けながら詩を書き続けるだろう、文脈を違えて
継がれた「悠久の大義」はこの資格の先にある生業でしか果たし得ないから。そういえば
同時死亡の推定、なんて民法の相続関連でやったなあ、なんて。
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