傘紅葉(かさもみじ)/葉月 祐
 





厳しい寒さに身を縮めるようにして
霜月 雪の降る街の道路に
ころがっていた 逆さまの傘紅葉


少し前まで
鮮やかに開かれていたその手の平を
突然の寒さに襲われた今は
紅い手の温もりを逃がさないようにして
小さな手の平を 更に縮めている


  あたりを見渡せば
  足元の傘以外には
  目立つ色は無く
  深めに息を吸えば
  鼻の奥がツンとする

  わたしもまた
  凍えた紅葉のように
  手袋も無いこの手を
  寒さに震わせ擦り合わせながら
  一握り分の熱を生もうと試みた


鼻のてっぺんに
刺すような冷たさが走る
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