瞳のように触れる、君へ。/青木怜二
 
君の指先は、瞳のようにひらかれた触覚をしている
私の顔など、誰よりもよく捉えていて
鼻筋は好きだが唇は嫌いと、批評も手厳しい。

ある日、乾き荒れた私の背中を撫でて
「頑張ってきたね」と、ふいにこぼした
その一言に私は、芯からさざ波を立てさせられ
助けていたつもりになっていたことを恥じた。

今日もふたりで裏山の小路を
手をつなぎ、歩きながら
君は地蔵の手前まで来ると、私を
引っ張って行きさえするのだ
なんとなく、「ひらけた感じ」がしてわかると
笑いながら地蔵さんの頭を撫でる
君と私の、果たしてどちらが導いているのか
きっと、どちらでも良いのだ。

敷かれた落ち葉のなかから一枚
鮮やかな銀杏の葉を拾い、君の
黒髪にそっと差し込むと
きょとんとするから、その顔を
瞳に焼き付け、私は笑う。
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