森の教会にて/ヒヤシンス
 
 
 物語はいつも唐突に始まる。
 ある日の僕は緑の森の中にいた。
 突然の驟雨をやり過ごし、気が付くと教会の前に立っていた。
 初めて自分のもの以外の神の声を聴いた。
 それはまるで音楽のようだった。
 天使に促されるかのように教会の中に入った。
 正面に木の十字架が見えた。
 一番前の席で外国人の夫婦が静かに祈りを捧げていた。
 僕は一番後ろの席に座った。
 音楽のような神の声は続いていた。
 この厳かな午後のひと時に心は満たされてゆく。
 ステンドグラスの窓からは午後の柔らかな日差しが差し込んでいた。
 人の心なんてこのような出来事だけで穏やかになってゆく。
 不
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