横須賀の駐車場がみる廃屋のゆめ/田中修子
 
ちのなかにも風が吹く

夏には裏の崖からのくずの葉にのまれてしまいそうで
秋にはふたりしてほっとしたものだ
なつかしくまずしくいとおしく
なによりかんばん屋のくちぐせだった
「たのしい」
がつまるうち
いつかわたしの魂がかえるのはあのうちへ
 
かぎしっぽの猫はひたすらねむりつづけるわたしのまたぐらで毛たんぽになり
水色の大きい目の車が海の見える贅沢なスーパーへつれて行ってくれた
 
あのうちはもうない
わたしがすてさせて
駐車場になってしまっている
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