幻聴か記憶か/
倉科 然
美しいピアノの調べとともに緩慢にほどけてゆく意識の底で
遠く離れた友の声を聞いた気がした
ここが終着点ではないと路線に踏み出せなかった一歩は勇気だと
どうか笑って
どうか笑って
つま先から意識が断たれてゆく夢と現実の狭間で
笑って
笑って
生きてくれないかと
真夜中の街で私の中で朝日が昇る瞬間だ
切り捨てられたかのように思われた私に反響するその言葉が
私の未来を照らしてくれる
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