病棟/TAT
 



病棟には喫煙所が無くて

その為には東口玄関の区切られたルームまで赴かねばならないのだった

歯の抜けた老人や
バイクで事故った族が
白々しい冬の午後に
メビウス(当時はマイルドセブンという名前だった)やケント(あの頃はまだお城のパッケージだった)を火に焼べていた

包帯も松葉杖もない外来の僕はひとり浮いていて高校生である事を誰かに糾弾されはしないかと少しだけ怯えながら

それでも親の帰りを待つ雛鳥のように
覚えたての煙草を隅で喫んでいた

海物語や171号線の話を聞き流しながら



そこへ空回りする大声で無理矢理浮かれた男が入って来て
男はパジ
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