雨の鏡/水菜
たしを柔らかく舞いながら誘う
幻影は、美しくわたしを誘い
わたしは、その哀しさに泪を誘われて
あなたも一緒に参りましょうと
わたしを誘ってくれた少女は
すぅっと雨が作り出した鏡の先
わたしの前でガラスに唇を寄せる
艶のある美しい黒いまつげに縁どられた柔らかな白肌と
まろみのある子供らしい柔らかな頬の曲線
冷たい雨に濡れている筈の頬は柔らかく薄紅色に紅潮し
瑞々しい野苺のようなぷるんとした唇が柔らかく窓ガラスから離れた
ほわほわとした、柔らかそうな光の集合体が
少女の周りを覆うと
ふっと、幻影は、わたしの前から消える
消える
ざぁっと広がる雨の音に
魅せられて
止まらない泪に
哀しみを覚えて
つぅうると、白く細い指のような光の筋が窓ガラスの向こうに通って
消えた
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