秋の夜の夢/塔野夏子
夢の中で僕は君と 宵闇降りる街を歩いていた
それはたしかに 僕が生まれ育った街だったのだけれど
僕の記憶にあるよりも なんだかきらきらしていた
まるでトワイライト・シンフォニーが聞こえてきそうだった
僕たちはアーケード街に入った
もうすっかりさびしくなったよ と云われていた街だけど
華やいでいてざわめいていて
なんだ昔のままじゃないか と僕は思ったんだ
そうそうあの角のあたりに映画館があったはず
などと思いだしながら歩いているうちに
君とはぐれていたんだ
僕は君を探した
アーケードを行き交う人のあいだをすり抜けて
だってこの街について君に話したいこと
たくさんあ
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