ヒルコ/為平 澪
、なんか気持ち悪いわ、もう、殺(や)ってしまえや、
不吉なことばっかりいいよる忌み児やし、
村かって若いもん居らんのに、余裕かってないし、
もう、ヒルコ、要らんやろ、役に立てへん児やし、
わからんよう、殺(や)ってしまえや。
ヒルコが居ること自体、村の恥よってに・・・。
(狼娘のお宿は此処だ
せや、ヒルコは村のこと悪う言いよるでな、
もう、見せしめや。ヒルコが居らんようになっても、
ウチら、いっこうに、かまわんしな。
こんなんどやろ、海の神さんの「人身御供」ちゅうんは・・・。
それ、ええわ、ヒルコは役立つ、村の英雄で死ねるんや、
役立たずが、役に立つ時がきたでな、じゃあコレで
よろしゅう、頼んます。
※
縛られたまま海に放り投げられ、重石で沈められたヒルコの口から
何かが飛び出した、という噂も失せて、千の昼と夜が巡り終えると、
村は大津波の口から、すっぽりと腹の中へと、しまわれていった。
(狼娘は、お宿の中だ
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