芝居/ただのみきや
 
 あかい傘ななめに濡れた路をながれ
 雨音のつめたさに背中を欹てながら
 遠景へ漕ぎ出して傍の違和をぼかす
 迷い鳩に差し伸べた手の仕草の嘘を
 街路樹の間から無言のまま見つめる
 おんなの喪服のにおい手繰るほどに
 うすくやるせなく光の句点が跳ねた
 落葉で張られた路は瞳のように潤み
 誰も問いを知らずに答えを探すのか
 台詞のように歩いて知らずに演じて




          《芝居:2016年10月22日》





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