底抜け舞台/ひだかたけし
 
夜の帳おり
扉が開いていく
次々と開いていく
が、
何もない
真っ白な虚、真っ白な虚
みっしり充満するばかりだ
俺は恐怖に襲われ
恐慌の際の際で
時の矢となり
疾駆疾走しながら
一気に突き破る、扉を
墜ちていく肉塊、地の窪み
昇っていく霊魂、天の深み
底という底に
亀裂、垂直に走らせ
天地を貫き
終いには
己の意識の底割れ底抜け
ひゅうひゅうひょうひょう
空を切り風に乗り
ギリギリで持ち堪えながら
俺はみる、内なる果ての涯てに

紫の影、湖に
ターコイズブルーのねっとりとした湖に
無数の紫の影、声響かせ歌い舞い踊る
それらそれら
遠近を欠き
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