われらの時代/葉leaf
る。農村共同体では、年上の者を敬い、年の近い者とは友情を結び、年下の者をかわいがる。天皇の権威をあがめる。これは高度経済成長期に大量の会社人間が生まれても変わることはなかった。会社というものもムラにすぎず、会社の中での感情的なつながりや、会社に対する滅私奉公が人々の存在理由となった。
日本では、超越的な存在に対して自律した個人が対峙し、自律した個人が超越的な存在へ信仰を寄せることで存在理由を見出すということが起きなかった。一部の宗教団体に所属する人たちを除いて、日本人にとって超越的な審級は空白のままだったのだ。天皇ですら超越者にはなりえず、人々は自らの存在理由をムラ社会や会社社会における感情的
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