無縁/春日線香
眠っている間にかきむしってしまって
起きると今日を過ごす顔がない
日が暮れるまでただ静かに
伏して新しい顔が生えるのを待つばかりだ
庭には幽霊のような花が咲き
うすい膜が生活全体を覆っている
覆っていながらそれは緩慢に締めつけ
息と息の間にぴっちりと隙間なく
堆積しては新しいかさぶたを用意する
そうした夢には階調があって
いつも中途で生かされているようなものだ
目をつぶって息をしているうちに
身体だけが潰れた軽石と化す
狂雲の日々が過ぎ去り
いつか荒野に投げ出され
獣に食われるのを
生まれ変わりが顔の空洞で見ている
わたしたちは大勢
すべてすべて無縁のものたち
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