空の鍋叩き/ただのみきや
 
立てかけたエレクトリックベースの
三絃のペグが反射して
眼球の面をにわかにすべりながら
谷底に微かな光を届けている
祈る女の言葉に
二つに引き裂かれたのだ
気が付けばカエルやコウモリばかり握っている
銀色の鍵が空っぽのまま火にかけられた鍋をかき混ぜると
心は犬のように晴れやかに放たれた
しろい毒まんじゅう
女の裸に虹がかかり
新しい地図が刺青される
甘い汗
真っ白い羽毛を張り付けて言葉を覆ったが
あっちの方は丸出しでおっ立てたまま
浜辺でジプシーたちと踊っていた
音と光はよく似た波で
泳がずに流されれば暗い半球までたどり着くだろう
おれの左目を持ったまま
笑っ
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