うつろ かがみ/木立 悟
 




曇のない空の下に
灯りが落ちている
傾きに逆らい 水は上り
空の奥の火を映しだす


何もかもがぶら下がる方へ
夜は静かに沈みゆく
鉱の声 光の声
水たまりの心を過ぎる鉄


空を分ける樹
双つの目をわたる径
色は静かに色を行ない
川の行き着くところには
常に暮れと雨がある


無数の手のなかの眠り
欠片の刺さる袋の径
曲がり変わる夜の光
透明と無音を隔てる滴


離れながら離れずに
灰と銀は鉛を巡る
降りしきる手にまたたく目
浮かび沈む白い尾の夜


ただしさもまちがいも硬くなり
両刃に積もり 共に沈む
雪の息 羽の息
見つめるものに触れては濡れる


虚ろのなかを回る鏡に
虚ろ以外が映るとき
三つの言葉 三つの火
忘れられた順に甦る




























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