爺婆に捧ぐ/ただのみきや
幼い孫を叱った
父や母とはどこか違う
こわいような
やさしいような
あの声音も言葉も
遠く 疎らになって
姿勢のよい老夫婦が
ショッピングセンターを歩いている
手のかかる年頃の孫を連れ
幸福についてまわる諸々の疲労を
穏やかに顔にしまっている
すべては良いことだ
そう思いたい
腰のまがった昔の老人も
腰のシャンとした今の老人も
生きることはいつだって大仕事で
楽しくて悲しくて
孫も可愛くてもう大変で
疲れてしまうものなのだろうから
十代の頃
三十歳まで生きると思っていなかった
二十代の頃はせいぜい四十までだと
死んでいるはずの年齢をと
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