爺婆に捧ぐ/ただのみきや
 
腰のまがった老人はめったに見なくなった
まがった腰で
ヨッコラショと 
風呂敷をしょった爺ちゃん婆ちゃんは
わたしが子供のころの爺ちゃん婆ちゃんだ
農村や漁村では今だって
腰のまがった老人は居るだろう
若い時分からずっと
腰を屈めて
たないだり
引いたり
耕したり
たぶん暮らしを立てるということは
腰を屈めて
重たいものをたなぐことなのだ


茄子や胡瓜を朝食べる分だけ採って
塩もみにしたり味噌汁の具にしたり
握るといつもヒンヤリしていたあの手も
朝から晩まで着けっぱなしの前掛けも
今のものよりずっと小さな箪笥の
引き出しに
足をかけて登ろうとする幼い
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