郊遊/吉岡ペペロ
あのボートで何処かにいこうか
兄はモールのトイレで体を洗う
食料品売場を兄妹が試食しながらうろつく
草ぼうぼうの原っぱで長い立ちションをした男は雨上がりの空のしたで泥土のうえでマールボロを吸う
ひっきりなしの町の音に溜め息そして台風から薄いレインコートで身を守り男がバイクや車のしぶく音にまみれて一時間数百円のバイトをしていた
あの洞窟はなんだろう
光がのぞいているが
あの洞窟はなんだろう
眠るこどものよこで髪をとぐ女の膝や脛や太股には影よりも光があった
鼾のような男の子と女の子の寝息が生きていることの切実と暴力を延々と垂れ流していた
鳥がさんざめく雑木林の一角は日に照らされていてそこを兄妹がおぼつかない足どりでさ迷っていた
男がボートを性交するような声を出しながらときどき蝶が舞う鬱蒼とした叢に引き寄せてから動かしていた
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