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もっぷ
約束の泉には夜明けに着いた
けれど女神の姿どころか風一つなく
さざなみも ない
すでにくちゃくちゃの手紙をポケットから引っ張り出し 確かめる
と ふいにどこかで少女の声が云った
「金の毒と銀の毒と銅の毒
その全部にやられたよ」
あまりの落胆にわたしは靴を並べて脱ぎ捨てて
この、ほとりで
ほとりで
「ここにとわに咲き続けたい」と祈る
一年ばかりのとわを だれにもしられずに
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