春はあけぼの/TAT
趣がある。雨が降るのも趣があって良い。
秋は夕暮れが良い。夕日が差し込んで山の端にとても近くなっているときに、烏が寝床へ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急いでいる様子さえしみじみと心打たれる。ましてや雁などが隊列を組んで飛んでいるのが遠くに大変小さく見えるのは、とても趣があって良い。日が落ちてから聞こえてくる風の音や虫の鳴く音なども言うまでもなく良い。
冬は早朝。雪が降った朝は言うまでもなく、降りた霜がとても白いときも、またそうでなくてもとても寒いときに、火などを急いでおこして部屋の炭びつまで炭を運んでいくのも冬の朝にふさわしい。昼になって、生暖かく寒さがだんだんとやわらいで
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)