イタドリ/Lucy
とうと流れる川を見下ろしていた
実際には目に見えているのに
見えていないのと同然のものが
世界には満ち満ちているのかもしれない
ある日突然知ってしまった
人の悪意や欲望に
一瞬で世界が塗り替えられることがあるように
今聞こえている鳥の声や
川面をよぎる燕の影も
何処までも平和に続いて見える
緑の畑も
私の意識に映っているのは世界の
ほんのわずかな一部にすぎず
彼女と私が見ている景色も
おそらくは全くちがうのだろう
初夏の真っ青な空の下
私達は二人して
遮るものの何もない川面に
触ると指が切れそうな光が
まっすぐに降り注ぐのを見ていた
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