水の簾/白島真
突き刺して奴を取り出すのはもう何度も詩のなかで失敗している。胸の中から溢れ出る言葉だからどうも先読みされてしまうらしい。
夕陽が美しいとぼくが感じてしまう前に早目の夕食をふたりで済ませ、きみは食べ残した魚の尖った骨でぼくの胸を一突きにしていい。
驚いてぼくの胸から奴が飛び出してきたら、最後のトドメを刺す一言だけは忘れないように。
「愛している」とただその一言を投げつけてやれば、「そんな言葉にはだまされない」と言って、すごすごと退散していくはずだ。奴が嫌いな言葉は愛だの平和、博愛、尊敬、人格者、聖職者など薄汚れた言葉たちであることをきみもよく知っているはずだ。
そのうちどこかに新しい宿主を探
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)