いっちゃん・悦ちゃん/MOJO
見逃さないでね」
「うん、分かった」
僕は、助走をつけて、木に向かって走り、そして蹴った。すると、ぽたぽたと、硬い何かが地面に落ちる音がした。
「よし、和子ちゃん、クワガタは落ちた?」
「わかんない、あたし、虫には、さわれないの」
背中が鈍く光るノコギリクワガタを拾った僕は、驚いた、とともになんだか、腹が立ってきた。
「和子ちゃんが、カブト島へ来たいっていったんんだろ?」
「そうだけど……」
「ほら、ここにも雌のカブトが落ちてる。さわれないのに、何で来たいだなんて言ったの?」
「太一、ごめんね。実は、内緒の話があるの」
「えー、なにそれ」
「誰もいないところでしか、言いた
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