栗色の弧/草野春心
 


  栗色のながい弧が
  私たちの耳にふれてから
  鱗雲の向うへ塗れていった


  秋の街をならんで歩く
  ふたり 着古した服を着
  透明な壁の群をすりぬけていく


  遠い とおい
  けれども確かに
  ちかづいてくる気持ち……
  窓の内側から見るように
  あなたの頬にさす光は
  治らない傷に似ている



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