新涼灯火 (三篇からなる オムニバス)/るるりら
【新】
手と手と てとてとてと かさなりあって音がする
足と足 大きな靴のなか小さな足が とてとて動く
とおい日の かげが
わたしを追い抜こうとして とてと 立ち止まる
冷蔵庫に 貼られた「幻を見る人」の文字が
なぜか 「幼を見るト」に変化している
ちちのくつの ちからは
わたしがはいたから ちからがあった
がらんどうの朝
わたしは あの日の 靴音を聴く
【涼】
いつもこうして 毎日毎日 パソコンをつつく
詩は誰のため?
誰の物でもないかもしれないよ
誰も読んでなんて いないかもしれないんだよ
だれそれのたそがれも
とて
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