メルシー/竜門勇気
 
経験といって良いでしょう。
駐車場の砂利をブチブチと音を立てながら車が走り出すと、少ない経験がこれから当たり前の日常になるだろうとあなたは予感します。
そしてそれはあなたが満足するまで続くのだろうと。
退屈な高速道路であなたはビールを飲みながら過ごします。あなたの妻や、娘、義理の息子、そして息子は口々に旅行の感想を話します。
あなたは少しその話に加わりますが、すぐに眠気に襲われます。あなたはその眠気に名残惜しさを覚えながらも抗いません。
それはこれから何度も思い出として話し合う事のできる話題だと知っているからです。

あなたは目を覚ましました。あらかたの荷物が運び出されたあとです。あなたは申し訳程度に紙袋の一つを取ります。
それはあなたが選んだ土産物です。あなたはそれを部屋に運び込むと、熱烈な5匹の歓迎に笑いながらその土産の栓を開けて5つのコップに注いで
その一つに口をつけます。そして何度も思い出として語り合うだろう話題を話し始めます。}
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