敬老の日に何ら敬うこともなく/ただのみきや
――雲が早い
と思えば雨か
秋らしい振舞に
朝からおまえと飲みたくなる
なすがまま
なされるがまま踊る木々
つめたい雫
鼻先に最初のひとつを感じた蛇が
暗い岩間にすべり込み
ただじっと
夢を消化する
立ち込める白雲に穿たれた
青く深い穴へ
泳ぎ出す
光にその身が
滲み
溶け出して
きらめく無数の塵
ひとすじの白い軌跡となって
――雲が薄い
と思えば止んで
葉の先から
雫 したしたと
秋らしい目配せに
ことばをいくつか燻らせて
ごろり
おまえの懐の匂い
《敬老の日に何ら敬うこともなく:2016年9月19日》
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