破り忘れのワンシーン/葉月 祐
 
の上に置かれていたマッチで
火の始末も考えずに
その最後の写真を燃やした


炎の中で幸せそうに笑うのはあの日の二人
それを見守るのは今の私

どんな顔してるかなんて
知りたくもない


写真の焼けた後に残る煙は
まるでこの心の底に残ったままの
燻りに染まった
後悔や懺悔の色に似ていた

分かってはいたけれど
逃げられないんだな、
自分にはそんな資格なんてないけれど
今だけは
誰かの前で ただ泣けたらと思った

過ぎた今を何度燃やしたって
あの瞬間の二人は消せやしない
それを分かっている上で
ひたすら声を殺した


心を破り棄てられたなら、
そんな馬鹿な願いを片手に






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