わたしの方舟/やまうちあつし
 
人は皆一人前になると
船の一艘や二艘持つものだ
実際わたしの同僚たちも
それぞれの個性に応じた
それ相応の船を持つ
ある者はボート
ある者はヨット
ある者はクルーザー
ある者はカヤックを
勢いに乗った同僚たちは
ここはひとつ皆で
大きな買い物をしようと
豪華客船を求めることに
一口いくらかで出資して
タイタニックと見紛うばかりの大船を
手に入れようと画策している
さて、わたしはと言えば
どんな船が自分にふさわしいのか
わからずにいる
ある晩夢に見たのは
遠い昔信心深いノアとその家族が
様々な動物と乗り込んだという
方舟
洪水の最中を揺られる一艘の木造船
目覚めると
わたしはなぜか泣いていた
今日はせっかくの
日曜日だというのに

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