まだ青い毬(いが)/葉月 祐
 

その狂暴な若い毬(いが)の色は
茶色に染まり始めて

その毬(いが)の切れ間が
ゆっくりと開けば
大粒の雨がゆっくり降るように
秋の実りを一粒ずつ
その木の下に落としていく

夜も休む事なく落ちるので
カツン コツン と
その音は一日中 聞こえてくるのだ


栗の雨の音が止む頃
私と母はその木の下に潜り込む
あのふっくら艶々とした
丸い栗の実を探し 拾い集めては
「楽しいねえ」と言いながら

時折降る毬(いが)の痛みすら
気にせずに笑いあい
拾った栗の数を競い合う
はしゃぐ大きな子供二人の姿

そんな未来が今から目に浮かぶ

あの幼いやりとりを
近所の人達もこっそり見ては
楽しんでいるのだろう

拾いすぎる栗も
多分楽しみにしているから
今年も頑張らなければと
実も熟さぬ内から
気合いが入っている


若葉の色にも似た
生命力に溢れる自然の殻
君が口を開けるその日が
待ち遠しい







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