指すら繋げなかったっけ/吐水とり
お茶をついだらコップの中に
麦茶の出しがらがけだるく舞っていて
ああいまの俺みてぇだなって
ふと思って飲むに飲めなかったり
ふふ
ああ今年の夏もおわりかよって
むかし浴衣のあの子にあげた
ふくろづめの金魚はどうなったんだろか
あの日たしかに、俺が思うに
あいつ全生命体一のハッピーフィッシュ
ぼんやりグラス傾けたらむせた
アスファルトに散るあんず飴
踏んで駆けてく下駄履きのちょうちょ
遠くで焦げた祭囃子
残響、残響、残響
来世は鱗になろうな
あの子の金魚の鱗になろうな
秋を知る術がないから光るのさ
夏のおわり、
鱗のおわり、
浴衣のあの子は泣いたのだろうか
カーテンの向こうで
豆腐屋の笛の音
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