道端で、/狩心
昨日百万円を拾った
この百万円で自分の人生が少し変わると思ったら
少し怖くなった
そのお金がうにょうにょ動いて絡みついてくる蛇のように見えて
とっさに投げ捨ててしまった
道端に落ちた誰のものでもないそれをじーっと見て
それと関わるべきか、よく考えた
僕はそれに話しかけてみた
僕はその本質をもっと知りたいから千切って中身を見ようとした
お互い、お前も可哀想な奴だなとつぶやき合った
僕は鞄にしまい込んでいた紙とペンとセロハンテープを取り出して
「僕は迷子です」と書いて、そのお金の束に貼り付けた
僕はそれを拾わずに、顔を上げて、広がる街に消えていった
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