矢部川 借景/soft_machine
 
けたバランス
欄干から跳ねて反れた空で句点になれ
つかのまおちた無重量

夕ぐれ時には
こまかな波のすきまから
源五郎がおどる
傘は雨をあつめ
亀もうらがえる
ひざをかかえた老人が
ぴくりともしない浮子のゆくてを凝視している
このながれの裡にながれを証すところまで
私たちのうち誰かが
いちどでも触れれば
なにもかもが沈むみなそこの世界へ

(息ふけば
 雲はすこしおおめに動くと信じていた)
(赤いふうせんも
 やがて世界を一周してくるものだと)

ひとはいつか石をつみおわり
抑えきれないながい手をのばす
にじみ湧くみなもとの尖で
きざす甘美な突起と穴たちと裂けめ

水ははじめにのろいやがていのる
からだふかく波うつ
石をなげるたび波紋する







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