秒針/葉月 祐
眠らない秒針に
わたしは度々起こされる
なかなか寝付けなくなり
夜の部屋に響く針の音を
縫い合わせるようなイメージで
呼吸をしてみたけれど
その規則正しさに
追い付けるはずもなく
過呼吸に似た苦しさだけが
明かりの無い部屋の中に残った
時は苦しまないのだろうかと
息苦しさに悶えながら
相変わらず乱れる事のないその音に
耳を澄ませてみる
そこに降り始めた雨の音が絡むと
時計の音は 角がとれた響きに変わり
どこかで聴いたクラシックのような
安らぎに満ちた音楽へと変化した
秒針と雨の旋律に
整えられていくすべての乱れ
ゆっくりと
意識も和らぎ始め
わたしは徐々に
呼吸のリズムを取り戻し
失ったはずの眠気に誘われ
多分、この まま・・・・ ・・ ・
眠らない秒針に
わたしは度々起こされる
しかし結局は
眠りへと導かれているらしい
戻る 編 削 Point(1)