呪術師の末裔/ただのみきや
引き寄せて歌の精よ耳元に
オンとイのほつれ目
楼蘭の砂から掘り起こされた女の髪のよう
忘れられたイトが絡まった
黴臭い沈黙から ふと
夜は陽炎のようにゆらめき立って
歪み捻じれたこの道を筆の仕草で歩み寄る
水が染み出るように
静けさを包む歌声の
ことばと世界
の境は侵食されて
爪先の海を桔梗が咲き染めた
頃《萎れた花首に取り残された蝶が過去へと飛び立つ》
古今は混濁する
寒流と暖流
交わって混じり合えず
嫉妬に狂い
影のように寄り添い互いの孤独を覗き見ながら
野火のように不意に押し迫る
悲しみを嘯いて掻き鳴らされる異国の琴
猫のように柔らかく弧を描く腰
泡
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)