印象派/やまうちあつし
わたしの中に
ひとりの画家が住み着いて
わたしの心をアトリエにした
家賃も払わず居座ったその画家は
来る日も来る日もデッサンを重ねてばかり
わたしの胸中は
未完の作品であふれた
あなたの第一印象は西日の感じ
なにかせつなくて
どこかまぶしくて
次に見たときは月夜の感じ
そしてあなたの祈りの感じ
あなたのまとった光の感じ
ある日微笑みが
やがて沈黙が
わたしの画家は絵筆を取って
カンバスを塗りたくる
アトリエは絵の具で汚れ
わたしはたまらずペンを取る
ノートに言葉が綴られる
くらべられないものばかり
とりかえせないものばかり
この絵が仕上がらなければいいと
ばかばかり
第一印象も
第百印象も
まるで変わらない
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