ことしの夏は のこと/はるな
困らない。それが発見だった。なにも困難じゃない。ということに、困難さを思い出してはじめて気がついたのだった。
むすめの肌がだんだん離れていく。上手に走っていく彼女の髪も脚も伸びて、それは喜び。でも夏がゆくなかでわたしはさびしかったのだ。これからどんどんさびしくなる。でもそれはやっぱり、恐ろしいとか困難なこととは別のことなのだ。
それはわたし自身の問題で、その証拠に、むすめが伸びた髪を絡ませながらこっちを向くとき、彼女のためにしてはいけないことはなにひとつないように見える。
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