ことしの夏は のこと/はるな
 
し改札を抜け(むすめが「ぴっ」と口真似をするのがかわいいのだ)エレベーターもしくはエスカレーター(エスカレーターにベビーカーをのせないでくださいという案内を無視する)を使って上がりあるいは下がり、電車に乗り電車を降り、来たときと似たような手順で改札を抜け(やはりむすめは「ぴっ」と口真似をする)、駅を出る、そのひとつひとつの手順に生じる隙間に思考はこぼれおちる。
色々のことを思い出す。というのはつまり、忘れていたということで、それは生きることが恥ずかしいことだということ、あらゆる物事の困難さ、無価値さの美しさとわたしの無力、すべてが「すべて」ではないこととか、不安たちと断絶。
むすめといると困ら
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(6)