命の航跡/まーつん
深く蒼い秋空に
一筋、また一筋と
白い傷跡が
泡立ちながら引かれていく
暗い海溝にも似た
幾壽にも奥まる天蓋の懐
ある晴れた日、小高い丘に寝転がり
青草のにおいを味わいながら
私は、宇宙への入り口を見上げている
磨き上げられた
ガラスの球に
無数の爪痕が刻まれていく
それは、命の航跡
無垢な宝石だった星の表に
傷つけ、傷つきながら
生を演じていく魂たちの軌跡が残る
神の指先が
星/球を撫でる度に
その爪の尖りが、無垢な肌を
傷つけてしまうように
星は赤ん坊のように
与えられた運命の元で
傷つきながら成長していく
それを糧として大人になるか
痛みに耐えかねて、死を選ぶかは
痛みを与える私たち
生命の振る舞いに
人の営みに
かかっているのだ
無限に広がる空の大きさが
一粒の星の丸みとなって
この掌の内に
収まるとき
私は、ついに
愛の正体に触れたような気が
してくるのだ
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