爆ぜているものは無数にあり、そのなにひとつとして伝言を残したりなどしない/ホロウ・シカエルボク
はそういう記憶がたくさんある、誰にとっても、俺にとってさえ、まるで覚えている理由が判らない記憶だ―あるロッカーがインタビューでこんなことを言っていた…「忘れるというのは才能なんだ、忘れることが出来ない人間と言うのは、気が狂うんだ」なるほどねと思ったよ、だから俺はこんな時間にこんなものを書いているんだろうな―そう、だけど、そんなことやっぱりどうでもいいことなんだよ、だいたい正常だの異常だの…それって、誰基準なのかね―?俺は欠伸をする、そうすると脳内の溶解炉が稼働を止める、長い長い時間をかけて炉の中のそれは冷やされ、そうなるとしんとした静寂だけが残る、溶けるものは騒がしいのだ、俺は目を閉じる、瞼の裏側には溶けて行ったものたちが飛ばした飛沫が、ひどい火傷となって残っている…。
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