ミックスジュース工場/
 
明け方の二層の空 さかさまにして
新しいオレンジの上澄みを
そうっと コップで掬って 
朝一番のミックスジュースをつくる

青白い雲を支える工場の煙突は
この町のわたしたちのかわりに
悲しみをせいさんしているのです

それは白々とたちのぼり
鉄塔の森が凍える夜も
子供の声も届かない高速の側で

そのうち日が差し始めると
煙突の橙のラインが
くるくるとまきとられて
わたしの窓まで届きます
朝起きたら忘れずに、
隙間をあけておくのです

夕べの涙は瓶に閉じ込めて
考え事で失敗したマニキュアは
隠しておけばいい

左手を添えて
遥かに長いストローを迎えます
そいつを飲み干したならば、
悪戯な夢の続きも
もう忘れてしまうでしょう


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