ニュープラン/ただのみきや
 
一枚の写真を見せられた
それは遠い昔図書館の一番厚い本にこっそり挟んだ手紙のように
言葉にできない秘密を乗せたまま沈んだ船の位置を示すブイのように
暗い忘却の地の底へ一条の光の震える糸の繋がりを感じさせるものだった
やがて死者が輝ける衣を着て蘇るかのよう
久しく薄明の茫漠に霞んでいた意識の中
一つの記憶の小箱が音も無く開いたのだ
目覚めた記憶は感情を呼び起こすまるで眠り姫を目覚めさせるかのように
すると感情は歌声となって肉体を駆け抜けた
温かい巡り 震えとなり
甘酸っぱい波紋が広がって往く
――単純に幸せと言って良いかどうか
ただとても懐かしく 愛しく
楽しくて 嬉しくて
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