東京 (1974〜)/ベンジャミン
 
生まれ落ちたのは下町だった

色褪せた写真のように
どれも茜色に染まっている
真昼の公園も
二間のアパートも
父親が働いていた小さな町工場も
視線の先には
いつも人がいて
ろくろ首のように投げ出された顔が
視界いっぱいに笑っている
唯一
ひとりで歩いている記憶は
公園の途中にある橋
その段差を踏み越えた先の
まっすぐな道
小さすぎる一歩に景色は止まり
切り取られた時間が焼きついている


東京を離れた僕は
東京という響きを感じる
それは郷愁ではない
ましてや憧れでもない
電車を乗り継ぎ駅に降り立てば
巨大な電光掲示板に
あの日のような視界いっぱ
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