アリスの夢/梅昆布茶
 
運命は変えられるの?
アリスは尋ねる

運命なんてありはしないさ
きみが夢のなかで存在するように

偏在する夢が現在という一点に
結ぶ露のようなものが人生らしいんだが

アリスは頷くと白兎とともに舞台の袖へ退く
また不思議な夢の続きを永遠の子供達に伝道する使命に萠えて

アリスに故郷があるように僕にもある筈の何かが解らなくて
エンディングロールに答えを捜す

昔は夢だけでも結構2,3年は生きてゆけたものだが
いまはブレードランナーのように日々を費やす愚か者

夢のなかで心理テストを繰り返す
新宿歌舞伎町の夜のように底なしの淵に立ってるみたいに

僕の人生はドライブレコーダーと保険で保証され
安い女と連れ子4人と古いオーディオシステムと
ときどきの新しい地平線で構成されている

論理的解答は数理のなかにあって
文学的解答はあまりに広汎ではてしなく
解をもとめる必要性もなくて

ランヴォーのの燃え盛る詩編と
僕のつまらない短詩を比較しようもないが

いつも通りアリスに逢いに行く
いつも通りに

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