闇と盃/ただのみきや
なみなみと注がれた盃に
映る
かつて訪れたもの
掴むことも消すこともできず
ゆらり ゆらして
とけることもかけることもない
見つめれば朧
目を閉じればありありと
油絵の月のよう
決してなにも照らさず
さざめき立つ鏡から掬う
水は真砂のように
乾いた恋情の果てか
この手を下した夢の屍か
ひとすじの意志が天から貫いて
串刺しの生きた標本のように影だけが震えた
夜の孤独は騒がしく
枝葉は休まることを知らず
なみなみと注がれた盃に
溺れ
過去から見上げた顔
遠く花びらのように意識は去り
嵐の後に最初に目覚めたもの
声もなく目
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