空電歌謡は奈落のまぼろし/高原漣
 
夏がビー玉に映っている

セミが静けさを連れてくる

氷が爛れるほどの熱がすっと引いてゆく

夕立だろうか?

めきめきと育つ入道雲 遠雷がきこえる

風が稲穂をゆらし

水面を無数の蓮華が埋め尽くすとき

空に隠された夥しい死が

陽炎のむこうに姿をさらす

ノイズだらけの歌が

雨の向こうから流れてくる


奈落のように真っ黒い曲に
やるせない歌詞の挽歌

雀がさえずるのをやめるとき

その歌が代わりにきこえてくるだろう
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